くせ毛を活かしたい話

どうも、虫明です。

今回は髪の毛の癖の話です。

ここ2、3年位、私達の業界ではヘアケア、ストレートパーマ辺りの分野に特化した美容室が急成長した様に思います

それだけ世の中の人が髪に何かしらのコンプレックスを抱いているということだと思います。

ただ、私はそのコンプレックスでも【くせ毛】の部分に関しては、その癖を活かしたいと考えています

勿論ストレートパーマや縮毛矯正を否定している訳ではありません。

自分の仕事の理念として、【癖=髪の個性】としてスタイルをつくりたいと思っています

そんな話です。

毛髪の種類

ヒトの毛髪は大きく分けて5つの種類に分かれます

順に説明していきます。

直毛

読んで字の如く、【真っ直ぐな毛】です。

次項のくせ毛の原因で説明しますが、髪の断面が正円に近いです。

日本人には比較的直毛の方が多いですが、それでも実は何かしらの癖があって、真性の直毛の方は全体の20〜30%くらいです

全体的に直毛でもモミアゲや襟足に癖があったりもしますので。

また、直毛でも髪の硬さ(硬毛、軟毛)によってピンピンの毛もあればふんわりした直毛もあります。

よくくせ毛の方は直毛が羨ましいと言われますが、案外ショートとかだと雰囲気が出づらい、動きがないなどそれなりに難しいこともあります。

波状毛

所謂、うねりのある髪の毛です。

ウェーブの様な癖と濡らした時に癖が出てくるのが特徴です

上記のことから、強弱はあれどスタイリングの仕方やカットでかたちが比較的つけやすいです。

日本人のくせ毛の方にはこの波状毛と次の捻転毛が多いです。

捻転毛

ねじれのある毛です。

原因の項で詳しく書きますが、タンパク質の偏りから生じる癖です。

ねじれがある為ツヤが少なく、触感がザラザラしていて濡らすと癖が落ち着くのが特徴です

波状毛とミックスで出ることも多々あります。

縮毛

上の波状毛と捻転毛のミックス、更にかなり強い状態で癖が出ている毛です。

分かりやすく言うと黒人の方の様なバネ状の癖です

連珠毛

少し特殊な癖ですが、髪の太さが連続して変化しているので見た目が珠を連ねている様に見えることからこう呼ばれます。

触ると凹凸があり、細い部分で切れやすいです。

遺伝による髪の毛自体の形状の変化なので、縮毛矯正などでコントロールはしにくいです

くせ毛の原因

上記にも書きましたが、くせ毛の原因は大きく分けて

  • 毛包の形
  • タンパク質の偏り
  • 遺伝

があります。

毛包の形

毛髪は毛根の毛母細胞という細胞がつくっていてそこから毛包を通り、この世に出てきます。

この毛包は直毛の場合真っ直ぐですが、湾曲していると毛髪が押し出される時に曲がっていき癖が出てきます

なので、毛髪の断面を見ると、直毛はほぼ正円、くせ毛は楕円の形をしています。

毛包の湾曲の具合によって、癖の強さが変わります。

髪も成長していくもので、特に思春期、第二次性徴の辺りでその人本来の髪の太さや硬さになります。細かったり柔らかかったりすると毛包の形に左右されず癖が出にくい場合があります。(逆に柔らかいことで癖が強く出る場合もあります)そして、本来の太さや硬さになって初めて、その人自身の癖が出てくることになります。よく野球部で坊主にしたら髪質が変わったという話があります。これは徐々に癖が出てきていたけど、根元なので分からなかったのが、坊主にすることで癖が出た状態からスタートする為なんじゃないかという自説です。
反対に以前にも【意外と知られていない頭皮の話】で書いた通り、加齢により頭皮もたるみます。そして、たるみが原因で毛包の形が変わり、癖が出てくることがあります。また毛髪も細くなっていきます。「歳をとったら癖が強くなった」というのは、この頭皮のたるみと毛髪の痩せが一因です。

タンパク質の偏り

毛髪を形成しているタンパク質には親水性と疎水性の2種類の部分があります。

毛髪でいう親水性と疎水性は水を吸いやすい、はじきやすいということになります。

そして、この2種類のタンパク質は直毛の場合、毛髪内部に均一に分布していますが、くせ毛の内部は偏りがあります

親水性の部分は水を吸いやすいので、濡れていると膨潤して伸びて、乾くと縮みます。

反対に疎水性のタンパク質は固いので変化しにくいです。

すると、毛髪内部に偏りがある場合、2つのタンパク質の収縮率の違いから、髪の癖が出てきます。

以上のことから乾いた時に強く出る癖の場合はこのタンパク質の偏りであることが多いです。

遺伝

くせ毛は遺伝によるものも大きいです。

くせ毛は優性遺伝なので70〜90%遺伝すると言われています

本来毛髪は頭部を保護する為に存在しています。そして、くせ毛の方がカールがある分、表面積が大きくなります。そうすると、単純に物理的な衝撃からも守れるし、日光の吸収率も上がります。なので、生物学的な視点で言うと、くせ毛の方がより頭部を守れる(生物的に有利になる)ということになるからです。

縮毛矯正とは

と、ここまでくせ毛の原因について書いてきましたが、次は【縮毛矯正】について少し触れたいと思います。

最初にお話しした様に、最近は美容師業界でもそれぞれの特化した技術の分野や髪型のジャンルが細分化されています。

YouTube第二幕の話と同じ様にそれぞれの専門性を高めて得意な分野で戦っていくという部分では本当にどの業界でも一緒ですね

そういう意味では私は矯正などに特化した美容師ではありません。

なので、あくまでいち美容業界の人間としての見解を述べさせて頂きます。

縮毛矯正とはタンパク質同士の結合を切って、アイロンの熱でそのタンパク質を並べ直して、最終的に繋げてストレートにする技術です。

文字にすると簡単ですが、前項の様に癖や髪質によって色んな毛の条件に合わせて施術する薬剤や技術の選定をする、かなりデリケートな技術です

また、やはり毛髪の癖を矯正していく技術なので髪への負担は大きいです。(勿論薬剤や技術の進化でより髪への負担は少なくはなっていますが)

昔は矯正と言うと、ピンピンのハリガネの様な仕上がりだったのが今はオーダーに合わせて柔らかめに仕上げるなど微調整も出来る様になっています。

なるべく癖を活かしたい

くせ毛の人がかけたいなら全く問題ないです。

しかし、くせ毛の人の中にはかけたくないのに、止む無くかけている人がいるというのも現実です

もしくは矯正をかけるといことが自分自身の髪に対してデフォルトになっている方もいます。

思春期にかけ始めて、かけない】という選択肢がない状態でいるのは私は好きではありません

癖でしか出せないスタイルもあるし、スタイリングを工夫すれば収まる癖もあります。

ご自身の癖を出した状態、ストレートをかけた状態、両方のメリット、デメリットを知った上で好きな髪型を目指したいなと考えています

直毛の方がたまにパーマをかける様にストレートをかける。

そんな髪のサイクルがいいなと思って日々美容師をやっています。

数年前に【person】というお客さんにスポットを当てた企画で出て頂いた上の女性も縮毛矯正のループを止めて、癖を出したスタイルに変えた方です。

終わりに

再三言いますが、私は縮毛矯正のアンチではありません。

ただ、例え少し手間がかかったとしても【かけない】という選択肢もあるんじゃないか?というお話でした。

ありがとうございました。